第170章

「酒井正志。お兄さんの身体が、もう保たない。今すぐ来てくれ」

帝都へ戻った初日、酒井正志は真っ先に兄の様子を見に行った。父の命で帝都に残り、兄の身体を看護と監督の両面から支えている担当医――山口和樹の口から、酒井初音が頻繁に見舞いに来ていることも聞かされる。

それどころか、酒井裕也が残した会社まで、初音が見事に回していた。

だが、裕也はもう四年も眠ったままだ。専門チームが定期的にマッサージやケアを施し、筋肉が固まらないよう手を尽くしてきたとはいえ――植物状態にも、いつか「枯れる」日が来る。

ここ最近、各種モニターの数値を追うたびに、山口は嫌な確信を強めていた。裕也の身体は、限界が近い...

ログインして続きを読む